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意見書を頂いたので、掲載します。 [コミセン問題]

先日のブログで紹介していたところの意見書を、町会長さんから頂いたので掲載させて頂きます。
街の将来にかかわる重要な問題です。
議論が広がり、深まる中で、自治意識の更なる向上に繋がることを期待しています。



【意見】安土小学校は低湿地への移転でなく、



        優れた条件を生かし現地での改築を考えるべきである

―小学校のあり方は、「子どもと教育にとって何が大事か」を基本に考えよう―



                滋賀県立大学特任教授 博士(学術)福井雅英 2015714





はじめに




先日、74日に自治会長向けに「コミュニティーセンター等の建設に係る説明会」が開催されたので、上横町町会長として出席し、安土学区町づくり協議会からの説明を聞きました。コミセンの建設に伴って、それを小学校・幼稚園・防災施設の一体型とし、JR線路北側高架道路東側に建設してはどうかという提起がありました。現状では決定しているわけではないとしつつその方向で進めたいという姿勢でした。



 出席していた町会長の中から、「このようなことを詳しく知ったのは今日初めてだ」との声も複数出ました。説明者からは、「これもまでもまち協からは何度もお知らせしている」とのことでした。確かに文書での配布もあったのだろうと思います。自分の不勉強を恥じるしかないのですが、私も今年度町会長になった故に義務感から説明会に出席したのです。これまでの経過は、たまたま建設委員会の報告書に目を通していただけでしたので、この時詳しく説明を聞いて、教育問題を専攻してきた者として看過できないと感じたのです。当日は、安土学区まちづくり協議会の中江会長の説明を聞き、その場で何度か発言もしました。しかし、重要な資料であるはずの「報告書」が配布されないなど、釈然としない感じが残りました。その場で、今後の説明においては「報告書」も資料として提出してほしいと要望しました。



 続いて8日には常楽寺区民対象の説明会が開催されそれにも出席しました。約40名ほどの参加者があり、活発な意見表明がありました。それらの発言にも教えられながら、改めて資料を読み直し、経過を整理してみました。そして、その作業の中で、「建設委員会報告書」の位置づけと内容が重要な意味を持っていると気づきました。そこで、これまで面識もなく、大変ぶしつけではありましたが、「報告書」をまとめられた当時の委員長辻貴史氏を訪問してお話を伺うことにしました。辻氏にはご多忙な中快く時間を取っていただき、詳しいご説明をお聞きしました。



 なお、これまでの経過で特筆すべきことは、まち協会長のいう、「一体型で、第一候補地の方向で進めたい」という提起には、疑問や反対の声は多く出たが、賛成する意見は一つもなかったということです。 



 以下、これらを踏まえて、下記の答申案、報告書・要望書を読んだ上で、元教師で教育学を研究する個人として意見を述べます。



 長文になるので、1.経過および小学校移転問題2.跡地利用、公民館問題等として2部に分割します。



1.経過および小学校移転問題



【経過】



 本件に関わって学区民の側から論議の結果がまとめられた文書は以下の2点です。



・平成25年安土学区まちづくり協議会拠点検討委員会(木下輝明会長)



  答申書:安土学区まちづくり協議会保知七郎会長宛H251210日提出



・平成26年安土コミセン建設委員会:H26422日発足 8ヶ月にわたる論議と調査。



  報告書・要望書:安土学区まちづくり協議会奥田憲夫会長宛H261211日提出             委員67名(上記「拠点検討委員会委員」20名に加えて) 



           拠点部会、コミセン部会、防災部会、学校・園部会の4部会を設置し検討。



 この経過をきちんと考えることが重要です。確かに一体型でという答申書は出されていますが、その答申を出した20名の委員を含む建設委員会が、個別4部会での議論や全体会での議論、視察調査なども含む、より広範な検討を経て出したのが報告書・要望書であって、この重みを考えるべきだと思いました。答申書から報告書へと、論議を広げ深めてまとめられたのは明らかです。したがって、「答申書」にこだわって「報告書」を棚上げするのは民意を尊重しない態度であって容認できません。



 4日の説明会では建設委員会の「報告書」は配布されず、日付のない「要望書」は資料の中に在りました。もともと、この要望書は、報告書と一体のものであり、広く意見を聞きたいというのなら、論議の内容がより詳細に記述されている報告書も資料として配布すべきです。(今後の機会には提出してほしいと発言しておいたら8日の常楽寺区説明会では配布されました。)



【論点】



○「コミセン問題」とは言いながら、最大の論点は「小学校・公民館移転」です。



 とりわけ、「安土小学校の現状と将来構想をどう考えるか」、が深く検討論議されなければならないと思います。スタートは「コミセンの建設」です。それを入り口にしながら、出口は小学校・公民館の移転になっているのです。「一体型」を口実に、本来別問題である小学校の移転について論議を十分尽くさぬまま進めるのは問題だと思います。安土小学校の所在地を検討するのなら、小学校教育のあり方、子どもの学習環境、安全安心の通学環境、それを支える自然環境・立地条件、現在地で110年以上にわたって存在し、蓄積されてきた歴史的、文化的価値の教育的意味、地域と学校の関係など、検討すべき重要な課題があります。それらは、おそらく小学校に限る問題ではなく、ふるさと安土の将来ビジョンとも繋がる問題だと思います。さいわい、現在の小学校は部分的な改修修繕課題はあっても、緊急に全面改築しなければならない切迫した状況にはありません。今回の問題は、「子どもと教育のためには学校はどうあるべきか」という基本問題を、学区民が腰を据えて広く論議するチャンスであると考えます。 



<地域の教育力と安土のシンボルとしての小学校>



 駅前に位置し、中心市街地にある小学校は安土学区の重要なシンボルの一つです。先の建設委員会報告書では次のように指摘されています。



「駅前に110年以上も位置し、長きに渡り地域社会から育まれてきました。こうした歴史や伝統が、文化として定着した経緯の中で、地域の教育力がしっかりと維持されております」。これはきわめて重要な観点です。これを受けとめ、小学校のあり方について考えたことを以下に述べます。



○現在の立地状況と地域の教育力



 まず、安土小学校の立地環境とそれが育む地域の教育力について、また、その教育効果についていくつかの点を指摘したいと思います。



*安全・安心の教育環境・通学環境の重要性について



・安土小学校は駅近くの住宅と商店街の中に在りながら、静穏な学習・教育環境に恵まれています。



・現状通学路の大半は、地域の大人の目届く住宅地の中を通っています。



 地域の大人が小学生に慈愛の目を注ぎ、見守る現状は、学校が長きに渡ってこの地に定着してきた成果です。地域の大人と挨拶を交わしつつ登校できる状況は、小学生の通学途上の事件・事故などが各地で起きていることを考えると、そのこと自体が貴重な財産なのです。通学路も含め事件・事故のリスクを出来るだけ避けるという観点からも現状の立地条件は大変優れていると思います。



*地域の大人に見守られているという安心感とふるさと安土への愛着の育成を大事に



・少子高齢化社会となり、地域と学校、地域と教育の関係が、全国どこでも重視されるようになっています。学力についても、過疎化の進行する地域では「地域を高める学力」を考えるような、「ふるさと学習」などが展開されています。いずれも地域の大人とのつながりを通してふるさとへの愛着を育て、人格の安定性を深める教育志向だと言えるでしょう。「建設委員会報告書」にもあるとおり、安土のように歴史的に築き上げられた地域の教育力は一朝一夕にできるものでなく、金銭に換えがたい価値があると思います。



○小学校の改築や校舎整備は上記の優れた条件を失わないように進められるべきです。



*改築を検討するのであれば、優れた条件を失わない配慮が前提にされるべきです。そう考えると現在地での改築を真剣に追求すべきです。



 これまでの説明を聞くと、「まず移転ありき」という感じがします。小学校周辺の入手可能な土地とその地権状況を精査すべきだと思います。老朽化が進み、将来的に必要となった場合の改築に際しても、現在の校舎の建物配置を固定的に考えず機能的に整備すれば、現地での校舎増改築は十分可能だと思います。なお、トイレの改修や教室不足は論議の行方を待つまでもなく、子ども第一に考えて早急に対応すべき問題です。目先の対応を口実に移転すれば、かえって大きな文化的価値を失いかねません。



○コミセン等一体型小学校は教育上どうなのか



*小学校のあり方を考えるとき、第一に重視すべきは、子どもたちの安全・安心、学習に集中できる落ち着いた教育環境です。「答申書」がいうような「学区民が集い賑わいのある」コミュニティセンターが出来たとしたら、かえって静かで落ち着いた学習環境を求める学校と一体化することは相応しくありません。「一体型は多機能になるのでよい」との声も聞きましたが、よしんばコミュニティセンターが多機能であるのは好ましいとしても、小学校が多機能である必要はありません。むしろ、一体的に配置されることによって、子どもたちが「学習に集中できる」という学校の一番大事な機能を阻害する恐れがあるのです。




子どもと地域の大人が交流できるのはよいことに違いありませんが、それが学校の第一目標ではありません。学校における地域の大人との交流は、教育活動上必要な計画に沿って進めるべきものです。





2.跡地利用、公民館問題、移転候補地等について



○跡地利用の問題



 小学校跡地の利用については、地元東横町自治会の要望もあり、民間売却ではなく公的な活用を追及する方向がだされています。しかし、中江会長は、「あくまで市長との口頭のやりとりであり、約束の文書はない」と言明しています。市長は「公的施設で設置希望があれば申し出てほしい」ということですが、それはつまり、跡地利用の必然性がないということになります。常楽寺区説明会では、「合併時の経過の経験から口約束など信用できない」と厳しい批判が出たのも当然です。中心市街地の公有地は貴重な市民の財産であり、その最も有効な活用の姿が、次代を担う子どもを育てる小学校だといえるでしょう。



○公民館機能とコミセンの活性化



 4日の説明会の中で、公民館の年間利用者数は約3万人と報告されたように、公民館での旺盛な活動実績は安土の良さだと思います。できる限りの機能維持と発展のためには、現地での立て替えが望ましいと思います。「答申書」のいう「にぎわいは」、第一候補地よりも現在地の方が有利に追及できます。



 建設委員会の先行地視察では、一体型案のコミセンの狭小さに驚きが出たと指摘されています。コミセン建設に際し考慮するのは「学区人口比」だといわれているようです。そうなると、「狭い」と驚いた金田学区より小さくなる恐れがあります。「駐車場がない」などの指摘もありますが、近接の市営住宅の整備等と併せて考えればそれらの課題は解決できるのではないでしょうか。一体型案による移転では、公民館跡地利用は民間売却も考えられているようですが、市街中心部の貴重な公有地であり望ましくないと思います。公民館は将来的に現地で改築整備すべきだと思います。そうすれば、徒歩圏内にコミセン、防災拠点、幼稚園、小学校が立地し、安土学区の中心地域として学区民の地域統合の拠点になるでしょう。近接連携型の活用で相乗効果が期待できると思います。



○地域防災の観点からの検討



 一体化案は地域密着の防災の観点からも不十分です。高齢化の進む中、地域密着の避難所・防災拠点が分散して配置されるのが望ましいでしょう。大規模災害時には、避難移動そのものが困難であり、とりわけ高齢者には負担が大きいのです。



○第一候補地の問題点(JR線近くの高架道路脇)



 第一候補地の根本的な問題は、立地条件が悪いということです。低湿地で地盤がよくないのは周知の事実です。常楽寺区の説明会でも多くの指摘がありました。明治の水害の経験、昨年の台風時の冠水も指摘されました。地盤の悪さに伴う基礎工事費の暴騰の問題もあります。耐震工事の問題など、十分な安全確保のための財政支出は市全体の厳しい財政状況を考えれば難しいのではないでしょうか。このような地盤への不安の他、学習環境として考えると、JR線路の騒音問題もあります。常楽寺区の説明会では、地元自治会長が、直接現地に立って聞いた騒音の状況を踏まえ、相応しくないと指摘されました。



 さらに、県道2号線の整備延長など不透明な部分もあり、環境の変化が見通せません。このように教育環境、通学環境のリスクが大きいことを強く指摘しなければなりません。



○進め方・手続き問題




進め方や手続き問題でも多くの意見がありましたが、民意の尊重を重く考えるべきです。「報告書は棚上げし、市への提出は保留している」との中江会長発言に対しての異論が複数ありました。「住民の声を反映しているものをどういう権限で押さえるのか」、「まち協は住民の意見を反映して行政にものを言うべきだ」、「行政の下請けのように聞こえる」、「一体型で小学校移転という結論ありきのように聞こえるがそれはおかしい」などでした。




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コメント 2

大島正子

丁寧な報告書ですね。拝読し、国立競技場の建設計画が白紙になったことと重なりました。建物の煌びやかさでは無く、内容が大切でしょう。子供部屋で勉強する子供よりリビングで勉強する子供の方が集中力が高く成績もよいと昨年データーが新聞に載っていましたよ。笑!
世論の声はトップの判断をも動かします。そもそも、十分な予算も無いまま何処に向かわせようとしておられるのでしょうかね?町協の役員さんたちは、、、理解できない行動です。
by 大島正子 (2015-07-19 12:19) 

camus55

>世論の声はトップの判断をも動かします。
そうですね。
現在進行中の近江八幡市役所の場所ですが、当初、市長は小舟木の消防署あたりの田んぼに持って行きたい意向であったところ、八幡学区から反対のムシロ旗があがって撤回された様に、世論の声、住民コンセンサスがなければ始まりません。

あれから、福井さん以外の常楽寺の町会長さんに、たまたま食事に出掛けた先で出会いありまして、当然のことながら、小学校の話題になったんですよ。
その方も、町内のみんなから意見を求めて、話し合いを進めているとのことでした。

こうした積み重ねが、「まちづくりだ」と私は思います。
by camus55 (2015-07-20 12:37) 

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